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タオルを持ち、幸太の服にこぼれた汁を拭く。
「あらあら……。お着換えしないとね」
そんなことを言っている時に、部屋のノックする音が聞こえ「失礼致します」と、ふすまがあいた。
村井さんが、刺身を持ってきてくれた。
「あらっ、大変! すぐに布巾とタオルをお持ちしますね」
彼女は気を利かせてくれた。
「ありがとう」
私はグズグズと泣く息子をなだめながら、慌てつつ、拭く。
(あぁ、せっかく旅行に来たのに、ついてないなぁ……)
些細な事で、心がささくれ立つ。こんなのは家ではいつもの事なのに……。
大きなため息が漏れてしまった。
まもなく彼女がやって来て、拭くのを手伝ってくれた。床にこぼれたものも、手際よく拭いてくれる。
「ごめんなさいね」
私は申し訳なくて、ついつい頭を下げてしまう。
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