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「あの、これ良いですか?」  私が見つめていたビジュー付きニットに、スッと手を伸ばした女性がいた。  年齢は多分、二十代後半位。ショートカットの少し気が強そうな女性。華やかな顔立ちだった。 「あ、はい、どうぞ」  私は反射的に、一歩背後に下がった。特別欲しいという訳でもないけれど、少し残念な気分にもなった。 (まぁ、いいや)  そんな時だった。 「ちょっと、それ私が買おうと思ったのよ」  同じく二十代後半位の女性が、割り込むように私達の前に入る。  私はその場から、少し離れた。 「三山さん……」  ショートカットの女性の方が怪訝な目で、彼女を見つめる。このお二人は知り合いだろうか。 「鈴木さん。貴女はさ、ショートカットなんだからさ、ピンクとかの方が女らしくて似合うわよ」  つんけんした口調で、三山さんという女性は言う。サラサラのロングヘアだった。  ピンクは女性が好きな色だ。ピンクが似合うと言われ気を悪くする女性は普通はいないだろうけれど、棘のある言い方で、遠回しにムッとする言いぐさ。  私はハラハラした。
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