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「あらっ、それで買っちゃったんだ」 「はい、そうなんです……」  高崎駅で大川社長と落ち合い、渋川で乗り換えし、伊香保までバスで向かった。  後、二時間、旅館の託児所で預かってくれるというので、それに甘える事にした。子供達がいない方が、ゆっくり話が出来るからだ。  大川社長は隣の部屋を取ってあるものの、私の部屋に来て、一緒にお茶を飲みながら語り合った。  四千円もするカットソーは、なかなか高いものだけれども、あんなに人気だとは知らなかった。 「まぁ、でもいいじゃない。素敵な色だし似合ってるわ」と、大川社長。 「はぁ……」  でも、この色三十四の私には色が若すぎはしないだろうか。 「いいじゃない。若いうちしかそういう色着られないんだし、ね」  そして、また夫との経緯を話した。大川社長はご主人が他界し、 二年経過した。私の話を聞いてケラケラ笑い「夫婦ってそんなものよ」と、優しくたしなめてくれる。
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