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警察を去ってから事故死や殺害されたご遺体を、見た事はなかった。刑事をやっている頃はいつも見ていたのに。
新人の警察官はまず、吐く。私も元警官なので吐きはしないだろうけれど、心地いいものではない。
白い布でかぶせてあるご遺体を見せて頂いた。
長い髪に、美人だけどきつそうな顔。気の毒に、美しい顔は紫色に変化している。
「間違いない」
私は、首肯した。
「昨日は服の取り合いをしていた女性は、鈴木さんと言ったっけ?」
「そうよ。ショートカットの。下の名前までは分からないけれど」
手がかりを探すのは、容易い事ではないだろうと、安西君と馬場君の顔には困惑と疲労がこもる。
「でも、案外早く見つかるかもよ? あそこのお店、オンラインで会員登録しませんか? って洋服を買う際、聞かれたから。ポイントが貯まるんですって」
私が教えると、馬場君はすがるような目を向けて来た。
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