池村隊員の章 初恋をした少女と中央フリーウェイが謎を解く

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池村隊員の章 初恋をした少女と中央フリーウェイが謎を解く

1. 「ったく、あと今月は五枚切符のノルマがあるのか」  月末が近い。ぶつぶつと、ついつい愚痴をこぼしながら俺は、南北線の志茂駅の上を走行していた。  四十枚の切符ノルマは過酷である。けれども交通機動隊の任務。仕方がない。  周辺には、一般的な中層マンションが両脇に密集する、いつもの北本通り。  今日は少し視点を変えてみようか。  そんな事を考えていた時だった。  俺の目の前を走っていた、トヨタのビッツの前にいる、メルセデスベンツが、信号無視し左折していくのを見逃さなかった。この先には、日本火薬の会社がある。 「よし、いただき!」  俺は、容赦なくサイレンスイッチを捻る。  市民の注目がこちらへ向く。 「練馬ナンバー〇〇ー〇〇、黒のメルセデスベンツ、停まって下さい」  拡声でいつものように指示をすると、ベンツは速度を緩め始めた。 (よし、素直でいいぞ)  ベンツに乗っているのだから、相手は金持ちには違いないだろう。
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