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「えぇっ」
俺はついつい沈黙を破った。堀井の叔父さんの病院に勤務の医師だ。
「あぁ、知ってますよ。同期ですから」
俺はあまり当たり障りのない事を言っておいた。
(マジか)
ペンを走らせて行く。世間は狭いものだ。堀井と面識がある医師かもしれない。
「僕も事故に遭った時、あそこの病院に入院しました」
しかしこの医師の名は、俺は知らない。他の診療科の医師なのだろう。
「そうでしたか、白バイも大変ですね。堀井さんの姪御さんと同期だったのか」とその医師。この医師の名は、佐々木修平。うちの分駐所の警部補と同じ名前だった。
切符のもみ消しでも求められるかな? そんな事が過ったが違った。その駒田という医師はそれ以上は何も言わなかった。
「気をつけて下さいね」
最後に念を押して終わりだった。その駒田さんという人は「すみませんでした」と最後まで素直に頭を下げて去って行った。
(最後まで紳士的な人だなぁ……)
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