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「ごめんね、来てくれたんだ……」
弱々しい声で、奈美は俺をみる。
「大丈夫か……」
本当に過労だけだろうか。過労といっても、心の過労なのだろうけども。
「大丈夫」
身を起こしていた体をもう一度、奈美は床に預けた。
奈美は強いけれど、弱い面も持っている。それを表に出さない。わがままん所はあるかもしれないけれど、優しい女だった。
そういう所に惹かれたのだが。
「貴方こそ、大丈夫なの? 仕事抜け出してきたんじゃない?」
今度は奈美が心配した。こんな時にも。
「馬場警部補が帰してくれたから」
「そっか……。佑里亜ちゃん、お兄さんに連絡してくれたんだ」
弱々しい声で呟き、瞳を閉じた。ノックする音が聞こえると、看護師が入って来た。
「ご主人ですか? 奥さん大丈夫ですからね」
看護師のその言葉に安心した。
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