池村隊員の章 初恋をした少女と中央フリーウェイが謎を解く

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(そうか、小寺警部補の娘さんは、こごみちゃんっていうのか)  俺はその時、初めて知った。ピアノを習っている事も初めて知った。 「私ね、こごみちゃんがいつも弾いてる『アデュー』って、曲好きよ」  堀井はニコニコと、子供向けスマイルで対応する。    というか『アデュー』ってどんな歌だろう?  おそらく、昭和の歌なんだろうな。 「ピアノの先生が、その歌好きで」 「そっか。『中央フリーウェイ』もじゃぁ、ピアノの先生の好み?」 「はい」  二人は女同士、話が弾む。 (中央フリーウェイか。あのユーミンの歌か)  府中にある競馬場とビール工場が、歌詞の中に出て来る。府中の警察学校に通っている時、休みに通った事があったっけ。懐かしいな。  しかし、実は俺は『中央フリーウェイ』を聞いたことがなかった。女同士の会話に入れずぼんやり空虚を向いていると「遅い時間歩く時は、おうちの方と一緒の方がいいわ」と、堀井。  確かにその通り。でも無理だ。彼女のお母さんも確か警察官。この時間まだ、帰って来ていないのだろう。 「けど、うちのママも警察官だから」  こごみちゃんは、下を向く。
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