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「すまんが、君ら轢死(マグロ)を拾ってくれんか」
生々しい言い方をしながら、紺色の制服を着た警部補が近づいて来た。俺達にゴム手袋を手渡して来る。
「はい」
嫌とは言えないから仕方がない。
俺が独身の時、新荒川大橋で起こった、昭和の極左セクトの恨みがこもった無残な事故の事を思い出した。
あれを彷彿させる程のヒドイ事故。
(昨日まではピンピン生きていたのに……)
悲しく思った。
ご家族の人はどんな人なのだろう。
温かい肉片は、手にもつとぷるぷると震えるのも、あの時と同じだった。
そして警察署まで、俺達も移動した。
間もなく、佐々木修平さんのご家族が到着した。綺麗な母親に、子供が三人。
俺は目を疑った。
(あ、イケメン少年!)
うちの警察官舎に住む警察官夫婦の娘さん、こごみちゃんの『彼』
いや、彼氏ではないだろうけれど。
一番上の子が小学校六年、次が四年生、次が二年生と、三兄弟だった。
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