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 初恋を覚えた戸惑いと、切なさ。  その初恋の人が、今、悲しい思いをしている事を彼女は知っているだろう。  初恋かどうかは、分からないが。 「どうしたの? あの子の事、ジッと見て」  奈美が気味悪そうに、俺を見る。見とれているかと思ったのだろうか。エライ誤解だ。それじゃ、ロリコンじゃないか。 「まぁ、いいさ、来い」  俺は奈美に手招きし、赤羽にある居酒屋へ一緒に向かった。  おにぎりや焼き鳥、ビールや冷ややっこなどつまみながら、奈美に経緯を話した。警ら中の出来事を。 「あらっ、その少年、かっこいいじゃん」   「だろ? 俺達も出る幕がなかったよ」  女性はこういう話が好きらしい。奈美はうふふと、顔に優しそうな笑みを浮かべる。少女の健気な恋は、可愛らしいものだから。 「いいなぁ、可愛いなぁ。こごみちゃんの恋、実るといいね」 「ん」  俺は顔を曇らせた。また奈美はどうしたの? と尋ねて来る。仕方なく俺は昨日の事故の件を話した。
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