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「絶対誰にも言うなよ! 親友といえども佑里亜さんにも言うな」  俺は周りに声が聞こえぬよう、声を潜めた。真剣な顔で奈美は頷く。  先ほどの、こごみちゃんの思い人の少年について話した。  少年の父親に関して、だ。奈美の目はますます丸くなっていく。レモンサワーが入ったジョッキを斜めに持ったまま、目を瞬かせながら、真剣な面持ちで話を聞いていた。 「そうなんだ……」  静かに奈美は声を落とし、ジョッキをテーブルの上に置いた。奈美は、フライドポテトを店員に注文した。 「お医者さんだったんだ。こごみちゃんの好きな男の子のお父さん……」 「あぁ……」  可愛そうに。と、奈美は泣きそうな声で呟いた。この子はやっぱりこういう所が優しい。 「でも、お父さん、お酒飲まなかった人なんでしょう?」 「あぁ」 「誰かに飲まされたんだよ、絶対」  真剣な顔で言う奈美。  でも、誰に?
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