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「そういやさ、あんた知ってる？」
奥さんの方は陽気に奈美に話しかけてきた。どうやら奈美は、ちょくちょくこのお店に来ているらしい。
話によるとランチもやっていて、訪れるのは専ら昼のようだが。すっかり常連さんだった。
「あら、何なに？」
奈美は身を乗り出す。
「そこの高級マンションの、イエローレジデンスってあるじゃない？」
俺はドキッとした。佐々木さんの住まいのマンションだ。確か切符を切った時、その名前のマンションだった。
「うんうん」
「そこに住んでる、佐々木さんのご主人、酔っ払い運転で事故っちゃったんだよ。可哀想にねぇ」
俺は奈美と顔を見合わせた。流石に奈美も口に合わせる訳にもいかず、苦笑いになり「へぇ」と生ぬるい返事で流す。
「奥さんも良い人なのにね。可哀想に。あそこの一番上のお兄ちゃんの一太郎君が凄くしっかりしてるからさ、ますます可哀想でね」
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