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「この子、ピアノ、上手いよねぇ」
奈美は、ベーコンエッグとトーストを用意してくれながら発した。
「そうだなぁ」
音一つ間違える事のない、メロディ。中央フリーウェイは、彼女も好きなのだろうか。
その日、俺は奈美と一緒にランチへ出かけた。
休日の赤羽の街は、一番街商店街は割とどこの店も満席に近かった。
この辺は飲食店が密集し、朝から飲める店も多いから仕方がないのだろう。
よく行くチェーン店の中華料理店へ入る。こちらも満席だが、日替わりのランチを堪能し、駅周辺で少し買い物をして、帰り道を辿る。
例の公園の前を通った時だった。
「あら、こごみちゃんだ」
奈美が歩みを止める。
神妙な顔をしてベンチに腰かけていた。
(そうか。今日もご両親揃って仕事なのか……)
もう小五とはいえ、少し気の毒になる。学童とかあるだろうが、高学年だからもう行かない事にしたのだろう。
彼女の視線の先を、俺達は目で追った。
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