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「あ、少年」
俺は思わず声が漏れてしまった。佐々木さんちの一太郎君。
相変わらずのイケメン顔。こごみちゃんの視線の先には、佐々木さんちの一太郎君だけではない。女の子も一緒だった。ポニーテール姿の大人びた女の子。
親し気に一太郎君と話している。
けれども一太郎君は、親御さんを亡くされて落ち込んでいるのだろう。ポニーテールの彼女は「元気を出して」と、一太郎君の背中をさすっている。
「あぁ、こごみちゃん、可哀想に……」
心底、気の毒そうに奈美が眉を八の字にする。
子供の頃から、こういう光景ってあるんだな。
そんな時、一人の女が表れた。
ノーカラージャケットに、黒いパンツ姿の女。年は三十代後半だろうか。きれいに髪の毛はブロウされている。
仕事を持っている女だという事は、理解出来た。
その女は、一太郎君の『彼女』の母親らしい。
「さゆり、帰るわよ」
母親はそういい、一太郎君に頭を下げた。
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