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そんな昔の恋心を思い出を刻みながら、思い出しながら食べるクレープは、少し甘酸っぱい。
ブルーベリーのソースが、そう思わせた。
俺も堀井も決まって食うのは、ブルーベリーのクレープだったっけ。
(あの時、相思相愛なんて思わなかったな)
自嘲的な笑みが浮かぶ。
あの時、堀井に告っていたらどうなっていただろう。奈美は今、こうして隣にいなかっただろうか。
けれども堀井はもうすぐ母親になる。
俺は俺で、別の女性と結婚した。
人生って面白いものだ。
そんな事を思いながら、クレープを頬張る。たっぷりの生クリームとブルーベリーのソースが甘さと酸っぱさを交互させ、当時の思いを表しているようだった。
あの時の思いのクレープを食べている自分と、こごみちゃんの心をかぶらせた。俺がとやかくいう事じゃないが。
「私、好きだったんです。佐々木君の事」
突然、こごみちゃんは口を開いた。
「そっか」
奈美は優しく頷いて、こごみちゃんを見る。
そんな事位、鈍感な俺にも分かっていたさ。
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