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初恋の思い出に、苦さを感じているかもしれない。
「あの、お茶ありがとうございました。私、これで」
こごみちゃんが立ち上がった。
「あ、うん」
奈美も一緒に立ち上がり、玄関先で見送った。
「ね」
こごみちゃんが帰った後、そっと俺につぶやくように言う奈美に「何?」と俺は問い返した。
「こごみちゃん、何か知ってるんじゃないかしら」
「何が?」
奈美もそれを感じたか。俺も感じていた事は口に出さなかった。
「きっと、何かあるわよ。こごみちゃん何か隠してる。もしかしたら佐々木さんの飲酒運転の事について何か知ってるかもよ」
食器を片付けながら、奈美は言う。
「そっか」
でもそれが何なのかは、分からない。少女の心の中に入り込むなど、出来なかった。
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