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「まぁ! 本当だわ。これって何? 切符切られるわけ?」
思い切り怒った顔立ちで俺を見る。鬼に近い顔だった。
多分、性格的にヒステリックな女性だ。
「整備不良って事で一点の減点、七千円の反則金になります。が、そうですね、ここはおまけしますよ」
「え? 本当?」
女性の目が少し輝いた。
「故障中の紙を、貼らせて頂きます。このままカーショップに行き、付け替えてもらって下さい。付け替えてもらったら、すぐに故障中の紙は、お近くの交番か、警察署で必ず警察官に、はがしてもらって下さい。
じゃないと、貴女が罰せられることになりますので」
俺は書類を取り出し、ペンを走らせる。
「まぁ、ありがとう」
少し安堵した顔だった。それでも免許証から必要事項は記載しなければならないので、免許証をお借りした。
伊藤みゆき四十歳。表の住所は東京都府中市になっているが、裏を見ると住所変更した新住所が記載されていた。
新しい住所は、赤羽北になっていた。
「九月に引っ越されたんですか?」
俺が問うと、伊藤みゆきさんは素直に頷いた。
「主人の転職でね」
「そうでしたか」
俺は書類を書き終え、レクサスの後ろに『故障中』の紙を貼った。
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