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「それが誰なのか、分からない。こごみちゃん。君は知ってるんじゃないのかな。佐々木君のお父さんに、恋慕していた女性を」
こごみちゃんはフォークを置いた。
眉を顰め、首を傾げる。困っている様子だった。
「私の勘違いかもしれませんし、何の確信もないんですが」
「いいよ。教えてほしい」
俺はすがる思いで、尋ねた。
「伊藤さんの叔母さん」
「え? 何だって?」
俺は耳を疑った。おばさんって、あの『叔母』だよな。そうか、母親の姉妹か……。
「私、見たんです。私は、佐々木君と伊藤さんが両思いである事は知ってました」
切なそうな少女の声。実らぬ恋を、諦めた大人の女性を思わせた。
佐々木君のお父さんと、伊藤さんにそっくりな女性が、とあるレストランで会っていた。
こごみちゃんはお母さんと夜、食事に出かけた時、見かけたらしい。
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