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「何の事かしら」
すっとぼけ方が下手だった。声が裏返る。口がごもる。
警察官を何年かやっていたら、被疑者が嘘をついてる時の状況は大体一致する。
逃げようとする。口がごもる。よくあるパターンだ。
俺は警察手帳を見せた。
更に、女の顔は驚きの顔になる。
「ここで、何をしていらっしゃるんです?」
俺は問うた。
「何って……。事故があったんだな。って見に来ただけよ」
声に震えがこもっていた。逡巡している様子もよく分かる。
「府中からわざわざ、赤羽までいらしたんですか?」
「どうしてそれを!」
驚きと、震える声で伊藤さゆりの叔母であると、確信した。
「ちょっと、ここじゃなんなので、近くの交番でお話聞かせてもらえませんかね」
「どうして交番なんか行かなきゃならないのよ」
いつまでも、この女は怯えていた。
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