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「何も悪い事していないのなら、交番でその潔白を証明してください」
その女は悔しそうに唇を噛みしめた。ますます怪しさが増す。しぶしぶその女は逃げずに、交番までついて来た。
向かった交番は、ローズ商店街にあるローズ交番。
前に、安西主任と堀井が、独身の頃勤務していた交番だった。
(この交番で、二人は愛が芽生えたのかな……)
そんな事を過りながら、交番の引き戸をあける。
デスクには、若い女性巡査が書類にペンを走らせていた。年は二十四。
ショートカットに目はパッチリ。アイドル並みの顔立ちは、独身の男性警察官からも人気があった。
しかしこの子はそれを良い事に、鼻高々になり、自分が狙った男性警察官にはすり寄って行くという、良くない噂も耳にしていた。
所謂『尻軽』と言っていいのだろうか。今後、スキャンダルを起こさない事を願うが。
俺は警察手帳を見せると「ご苦労様です」と敬礼した。俺の左手の指を確認している。既婚者かどうか、確かめているのだろう。
(この子、抜け目ないな……)
俺の左指に指輪がはめられているのを確認すると、女性に「どうぞ」と椅子を出した。
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