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「佐々木先生とは、どういう関係でした?」  その質問に原田千佳さんは、無言になる。  あの優しい少年のお父さんが、そんな事をする人でない事を願った。 「好きだった」  噛みしめるようにつぶやいた彼女。原田千佳の肩が僅かに震えている。  顔をのぞきこむと、こみ上げる感情を必死に抑えている感じがした。 「貴女の片思いですか?」  今度は、女性巡査が問う。  仕事はしっかりしてくれるようだ。  俺が問うより、彼女が問うた方がいいかもしれない。女性被疑者からの聴取は、女性警察官が適しているのだから。 「いいえ。昔付き合ってたんです」  思いがけない答えに、俺も若い女性巡査も目を丸くした。  といっても、それは、今から十年以上前に遡る。  当時、調布市の病院で働いていた、佐々木修平と、原田千佳は男女の仲だった。  しかし小児科病棟の担当の主任ナースだった、川野美香に佐々木修平を横取りされたという。  その時、川野美香のお腹の中には子供がいたという。 「それが、一太郎君ですか?」  女性巡査の問いに、原田千佳はこっくりと、頷いた。
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