8月29日

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「え」 「俺は神様だから、なんでも知ってる」 神様は一歩棗に近づいて鼻先まで伸びた黒髪を掻き上げた。 「今暇だから。願い事かなえてやるよ」 「ちょっと、話が早すぎて」 展開が読めない。棗はひくりと喉を鳴らした。 「…じゃあ、凪にもう一度会えるってこと?」 「ああ」 神様はいとも容易く答えた。 もし、これが夢でも、希望は持てるのではないか? 俺が目を覚したら、凪も「おはよう」って隣で笑っているのではないか? 気休めでも、それでも。 「じゃあ、お願いします」 仮にも神様なので、深々とお辞儀をすると、頭上から笑い声が聞こえてきた。 「本当はこんなことだめだけどね。特別な」 神様は頭を下げている棗のつむじをぐりっと押した。 「行きな」 その言葉が頭の中で反響して、ノイズに変わった。 急に体が重くなり、立っていられなくなる。 ふらりとよろけると、棗はまた意識を手放した。
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