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「え」
「俺は神様だから、なんでも知ってる」
神様は一歩棗に近づいて鼻先まで伸びた黒髪を掻き上げた。
「今暇だから。願い事かなえてやるよ」
「ちょっと、話が早すぎて」
展開が読めない。棗はひくりと喉を鳴らした。
「…じゃあ、凪にもう一度会えるってこと?」
「ああ」
神様はいとも容易く答えた。
もし、これが夢でも、希望は持てるのではないか?
俺が目を覚したら、凪も「おはよう」って隣で笑っているのではないか?
気休めでも、それでも。
「じゃあ、お願いします」
仮にも神様なので、深々とお辞儀をすると、頭上から笑い声が聞こえてきた。
「本当はこんなことだめだけどね。特別な」
神様は頭を下げている棗のつむじをぐりっと押した。
「行きな」
その言葉が頭の中で反響して、ノイズに変わった。
急に体が重くなり、立っていられなくなる。
ふらりとよろけると、棗はまた意識を手放した。
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