8月29日

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棗と出会ったのは中間テストが終わり、後は夏休みを待つだけの時期だった。 その時付き合っていた彼女に屋上へ来てと言われ、初夏の陽気に包まれている屋上に向かった。 彼女と付き合ったのはちょうど3ヶ月前。周りからは倦怠期がそろそろくるんじゃないか?と、笑われていたが、彼女は自分の事が好きで、また自分も彼女が好きで付き合っているのだから、そんなことはないと笑い返していた。 夏休みが始まるから、遊ぶ約束事でも立てるのではないかと考えながら屋上の扉を開けた。 彼女は先に来ていたらしく、「遅いよ」と少し強めに凪を咎めた。 「ごめん。友達と長話してた」 「ふーん」 彼女の機嫌が悪いのは一目瞭然だった。ただ、日常茶飯事なので特に気にしてはいなかった。 彼女は少し我儘なところがあるから、自分が一番じゃないと気が済まない。それを凪も知っていたので、またか、何かやらかしたか?としか考えていなかった、 「あのさ、凪くん」 急に切り出され、凪は、「うん?」と彼女に歩み寄った。 「別れてほしいの」 「え?」 ぶわっと風が吹いて2人の髪をなびかせた。 「何で?」 本当に急に、別れを告げられてしまった。 昨日も2人で映画を見たのに?今日も一緒に帰る約束をしたのに?何で? 凪は後頭部をぽりぽり掻きながら、彼女の返答を待った。 「凪くんってさ、彼女の私より友達優先するよね」 明らかにいつもと声のトーンが違っている。 「優先って…」 そんなつもりはなかったんだけど…。 「私が遊びに行きたいって言っても、友達と約束してるからって。普通彼氏なら彼女のこと優先しない?彼女だよ?」 「だってそれは、友達との約束が先だったから。もう少し早く言ってくれてたら空けてたよ」 「はぁ?友達と私だったら私の約束の方が大事じゃないの?前の彼氏なら優先してくれてたよ」 出た。前の彼氏。 彼女は毎回嫌な事があれば何かと前の彼氏と比べたがる。
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