8月29日

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凪も少しカチンときて、声を荒げてしまう。 「友達も大事に決まってんじゃん。何でもかんでも彼女優先はできないよ」 「でも前の彼氏なら優先してくれてた!だって彼女だもん!」 「前の彼氏前の彼氏って…じゃあ前の彼氏とより戻せば?俺なんかと別れて、早くよりを」 までいいかけて、彼女の右手が振りかぶろうとしているのに気づいた。 あ、と思うと、ばちんと鈍い音を上げて左頬をビンタされていた。 あまりの出来事に声を出さないでいると、彼女が涙を流しながらぶった右手を左手で抑えていた。 「凪くんって最低だよね」 ぶたれた左頬がじんわりと痛み出す。 「…最低なのはお前だろ…」 つい口をついて出てしまった言葉にはっとなる。 彼女は大きな目に涙をいっぱいにためて、走り去ってしまった。 「あー、またか…」 痛みがます左頬をさすりながら、フェンスにもたれた。いつも自分が振られる側だな…とぼんやり空を仰いでいると、カランと缶が転がる音がした。 ぱっとその方向を見ると、1人の男が立っていた。 「…見てた?」 ふふっと笑いながら聞くと、男は気まずそうにコクリと頷いた。
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