8月29日

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ふわふわの癖のある髪をなびかせて、少し挙動不審な彼は、凪を見ていた。 「恥ずいところ見られちゃった」 ふざけた調子で言うが、彼は制服の裾を握りしめたままだった。 どこかで見た事がある顔だな。 ぼんやり考えていると、ふっと思い出して、つい、「あ!」と声を上げてしまった。 彼は肩を震わせてビクついていた。 「同じクラスの森山だ!一番後ろの窓際の席の!」 フェンスから背中を話して、彼に一歩近づくと、急に一部始終見られていたことが恥ずかしくなってまだ痛む頬を撫でた。 「彼女に振られた。ぶたなくてもよくない?」 笑いながら話しかけると彼はきゅっと唇を噛んでからぼそりと言った。 「痛くないの?」 2年間同じクラスの筈なのにまともに声を聞いた事がなかった。顔が幼い分、きっと声だって中学生のような感じなんだろうと思っていたが、しっかり声変わりはしているようだった。 「痛いよ」 正直に話すと、森山はまたギュっと唇を噛み締めてから凪のぶたれた頬を見た。 「…冷やさないと腫れるかも」
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