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「つまらない。」
彼女は思わず口に出してしまった言葉を恥じる事もなく、書類の束をテーブルの上に投げた。
向かいに座る彼は、涼しい顔をしてブルーのカクテルが入ったグラスを傾ける。
「別にスイセンが悪いわけじゃないよ、気分の問題」
そう言うと彼女は自分で投げた書類をまた一纏めにし、テーブルの上に置き直した。
そしてまだ半分ぐらい残っている、レモン色の液体が入ったグラスに口をつけた。
「仕方ないじゃないですか。他にピンときた人居ます?アザミ?」
スイセンと呼ばれた向かいに座る青年も、あきれたように肩をすくめる。
時間は夜の八時。
薄暗い店内には、しゃべるのには困らない程度の大きさに、オールドロックが流れている。
ココはY'sと呼ばれる、バーのようなものだ。
カウンターの向こうでは、20そこそこの若いバーテンダーがグラスを拭きながらお客さんとの話に花を咲かせ、5つある丸いテーブルの内の1つは、これもまた若いカップルが静かに話をしている。
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