第7.5章

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 懐かしい自宅に戻った時にポストに入っていた綺麗な封筒の中身は、部署移動の指示書だった。元の場所に戻って、これまでと同じように働く。  小さくため息をついてからドアを開いた。部屋の中は出た時よりもずっと綺麗になっていた。生ごみも、誘拐される前日に飲んだはずの缶酎ハイのゴミもなくなっていた。何となく犯人が想像できたが、深く考えない事にした。  もう、終わったんだ。  毎日仕事をして、帰りに酎ハイを買って帰る。これまで当然にしてきた日々が、なんだか味気なく感じた。特別すごく幸せだとは思っていなかったが、不幸だとも思っていなかった。こんな人生を大多数の大人が送っているのは知っていたから。  これまでの人生はリセットだ。  新たな気持ちで毎日を過ごそう。  兄妹になったら、彼と会う事もあるだろう。そんな時に少しでも可愛いと思ってもらえるように、これからは身なりにも気を付けていこうと思う。  あ、忘れてた。お母さんにおめでとうって言わなきゃ。なんで彼氏出来たって報告してくれなかったのって、そうからかってやろう。  ひと月ぶりに見る自分の携帯は安っぽかった。そりゃあ、百均のケースなんだから安く見えて当然だ。ブランドのケースを買えるほどリッチでは無い。 プルルルルルル 「あ、もしもし?お母さん?____聞いたよーっ、彼氏が出来たんだってぇ?あははははは
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