第3章 オーロラの下でやっちゃいました

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* * * * 夏鈴 * * * * 『なんでこんなところに来ちゃったんだろう・・・。 あんな子に比べられるなんて、どこまでバカにしたら気が済むの? 帰りたい・・・、帰ったらすぐに離婚届け取りに行こう。 もう、こんな思い遣りのない男なんて捨ててやる!』 暗い雪道を照らすバスのヘッドライトの向こう側を見詰めながら、彼女の本当の気持ちに耳を澄ませた。 劣等感が強い彼女の怒りの矛先が、旦那さんを通して自分自身に向けられている。 離婚なんて望んでいないのに、離婚する口実を探しているみたいに感じた。 目には見えない力が働いて、私達は出会い夫婦になる。 不思議なことに、性格や育った環境に共通点がなくても、夫婦はちゃんと向かい鏡になる伴侶をお互いに選ぶ。 相手の嫌なことに目が行く人ほど、自分に劣等感を抱いている。 この奥さんはそれに薄々気付き始めているようだ。 相容れないものがあるのはきっとお互い様なのに、彼女は自分の暗部を見ずに相手が去れば楽になれると信じている。でもそれは、一時しのぎに過ぎない。相手が変わるだけで、必ず同じ課題に直面することになっている。 要は素直になれさえすれば、どんな相手を前にしても不貞腐れたりできなくなるんだけど。 我が強い人は、自分の非を素直に認めないからこじらせやすいのかな。 新婚旅行から大きな課題に直面してるんだなって思ったら、応援したくなる。 私はオーロラが出ている方向に向かって、神様に祈った。 この幻想的な夜の中で、皆自分の目の前にある幸せに気付いて心から感謝できたとき、とても大きな愛に満たさるはずだから・・・。
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