第3章 オーロラの下でやっちゃいました

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運転手さんがベストポイントに連れて行ってくれた。見晴らしのいい小高い丘は、除雪されていて快適な環境だった。人工的な明かりのない場所で、澄んで乾燥した空気はマイナス23度。風が少し吹くだけで剥き出しの肌がビリビリとする。 「鼻の頭がトナカイみたいになってる」 晴馬の顔を見て、私が笑うと「お前こそ、可愛いピエロみたい」と返してくれる。 私を見詰める目がとても優しくて、すごく幸せ。 この穏やかな笑顔をお互いに向けあえるのは、私達は素直な心で向き合っているからだ。 ちょっとした喧嘩の時も、私は素直でいたい。 意地を張る時もあるけど、それは長くは続かない。 突き放すとすぐに寂しくなって、両手を広げて抱きしめたくなる。 限られた人生という時の中で触れ合っていたいから。 オーロラを見上げながら、抱き寄せあった。 晴馬が私の腰に腕を回して持ち上げると、夜空が少しだけ近くなる。 予測のつかない光の動きを目で追いながら、ふと視線を落とすと私を見上げている夫の視線が絡みついてきた。 「オーロラ見てる?」 「オーロラに見惚れてるお前を見てる」 そんな甘いセリフを恥ずかしげもなく言ってくれるから、私も大胆に彼の唇を奪った。 他に人がいることも気にならなくなって、心を込めたキスをすると晴馬は蕩けた目を細めてキスの応酬をする。これを見るためだけに勇気を出してくれた愛しい夫を抱きしめていると、またあの不快な声が頭の中に流れてきた。
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