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奥さんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、私の顔を食い入るように見ていた。
「素顔の自分をもっと可愛がってあげてくださいね。お化粧、濃くなると自分の顔も忘れてしまいますよ」
私はバイバイと手を振って、立ち上がり晴馬のところに戻った。
彼女は黙り込んだまま無言で私達を見送っていた。
バスを降りると旦那さんが近くからこちらの様子を伺っていた。
「妻がまたご迷惑を?」
「あ、いえ。そうじゃないんですよ。彼女、愛されているかどうかずっと不安みたいですね。夫婦になれたっていう事実を見て、お互いに大事にし合えたら良いんですけどね」
「・・・はぁ」
唖然とされてしまった。
「小娘が生意気なことを言ってごめんなさい。でも、せっかくのオーロラだからちゃんと感動して欲しいなって思ったものですから・・・」
「あ・・・はい。わかります・・・わかります・・・お気遣いありがとうございます」
旦那さんは頭をぺこぺこと下げてから、奥さんのところに駆けつけた。
晴馬はずっと私の隣で黙って付き合ってくれた。
目を合わせると何とも言えない潤んだ瞳でジッと私を見詰めていた。
「ドキドキしたじゃんか」
「ごめん・・・。なんか、放っておけなくて」
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