幼馴染

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「ほら、あそこ」 オメガの話になった途端、俯くアイツの前で指を伸ばす。枝の下の方に咲く赤い椿に混じって、一輪だけ白い椿が咲いていた。 たまにこういう現象が起きるのだと図鑑で読んだことがある。 初めて見た瞬間、これは絶対にアイツに見せたいと強く思った。 だって、そうだろう。多くの葉の隙間から覗く太陽の光を少しでも浴びようと、健気に枝を伸ばす様は健気で儚く、美しい。 控え目に咲く花はまるで白く発光しているようだ。 だから俺はここに咲く花が好き。咲く場所がどうであれ、あそこに咲いてる白椿は天辺のどんな花よりも綺麗なんだ。 そう言ってアイツを見ると、アイツは花ではなくて俺をジッと見ていた。 「悠宇はオメガ贔屓だね」 アイツは薄く笑って、あっ、と声を出す暇もなく手の届く場所に咲いていた白いはなびらの椿をパキリと折った。 ああ、折角綺麗に咲いていたのに…と悲しい気持ちになる俺の前に、手折った花が差し出される。 「そんな顔しないで。ただの木の話でしょ?」 枝から折られた椿の花は家のコップに入れて飾った。いつまでも枯れませんように、と花屋さんで栄養補助液を買って入れた。 だけど、数日したらポトリと椿の花だけが落ちてしまった。
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