幼馴染

4/14
前へ
/65ページ
次へ
聞き慣れた学校のチャイムが鳴る。机に伏せって眠っていた俺はその音に驚きながらも、ビクついて起きるなんて格好悪くて少し間を置いてゆっくり体を起こした。 すぐにふわりと香る甘過ぎない花のような嗅ぎ慣れたフレグランスが鼻腔を擽る。 この香りに驚きはない。来ると思っていた。 いつも授業が終わると俺の傍に来る馴染みの香りだ。 顔を上げると机の横に座り込み両手を机の淵に掛けてこちらを見つめる幼馴染の顔。 日本人離れした顔に映えるのは、サラリと揺れる脱色してアッシュグレーを入れた髪だ。骨格の華奢さと淡く明るいグレーの髪色は驚く程に違和感がない。地毛だと言われても、へぇそうですか、と納得してしまうレベルで似合ってしまう。 そんな幼馴染は俺と目を合わせると泣き黒子のある目元を和げた。 「おはよ、悠宇(ゆう)。よく寝るねえ」 眉尻が上がる反対に垂れ気味の瞳とのバランスが崩れ、ふにゃりと柔らかな表情に変わる。1度も伝えたことはないがこいつの見せるこの顔の、この瞬間が俺は1番好きだった。 「…絢斗(あやと)、お前のせいだからな」 「俺の?なんでえ?」 「自分の胸に手を当ててよく考えてみろよ」     
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

208人が本棚に入れています
本棚に追加