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「貴方にだって、彼女が台所の掃除してるの見えてますよね。
だったらそんな所に置けば、邪魔だと思いませんか?」
洋二は、視線を落とし自分の足元を見つめたまま、
体が動かなくなってしまった。
そして、
どうしよう。
繰り返しその言葉だけが頭の中をグルグルと巡り、
痛いほどに動悸が速まっていく。
そんな彼の頭上から、あからさまに呆れた溜息が投げられた。
そしてその溜息だけを残して、木下が、その場から遠ざかっていく。
俺、やっぱりここから弾き出されるのか。
また俺は、失敗したのか。
台所の掃除をしながらチラチラと向けられる佐藤の視線が、
冷たく感じられる。
俯いたまま立ち尽くす洋二の指先が、小刻みに震えてきた。
自分は、たった一日すら、まともに作業することもできなかった。
そんな絶望にも似たものが、胸の内に広がり始める。
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