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なにしろ、辺り一面グレーに染まって見えるほど、埃が積もっている。
目に入る範囲だけでも、黄ばんだ障子紙は無造作に破れ
薄茶色になった襖も一部が破れている。
その上、床には所々人の足跡と何か獣でも入ったらしい小さな足跡も
薄っすらと確認できる。
そして恐らくここの元の住人は、引っ越すことはなかったのだろう。
箪笥や食器など生活用品は、ほとんど手付かずに、そこに残されている。
やや呆然と、そんな光景を見つめる彼らに山崎の声が掛かる。
「畳を新しくするまでは、土足のままで上がってください。
それと一応、必要だと思われる用具は家の中に置いてありますが、
他に必要なものがあったら、
昼に弁当を届けにきますので、その時におしえてください」
じゃあ、よろしくお願いします。
ペコンと頭を下げた山崎は、軽い駆け足でバスへと戻っていく。
はあ……。
誰かの口から、細い溜息が零れ出た。
正直、どこから手掛ければ良いのか戸惑うほどの荒れ方と放置ぶりに
言葉もない。
だが、
「こいつぁ、やり甲斐がありそうだな」
明るい声で沈黙を破ったのは、年長者の香川。
そして、取り敢えず二階と一階の二手に分かれようと提案される。
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