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そして、恐らく木下という女性は、仕切り屋気質なのだろう。
「トモちゃん、先にキッチンのほう始めてくれる?
私、食器類なんかを全部出して箱詰めにしちゃうから」
それに彼女の友人が頷くと、彼女は、洋二の方へと視線を向けてくる。
「それと、山本さんは襖とか大きな物を外してもらえますか?
あっ、それと、まずは雨戸を開けてもらえると助かります」
洋二は、黙って頷きながら、胸の内で自分に言い聞かせるように呟いた。
雨戸と襖。雨戸と襖。雨戸と襖……。
だが、必死にこの場をこなそうとする彼に、
木下はニッコリしながら、マスクとゴーグルそして軍手を差し出してくる。
しかし洋二は、礼の言葉も口に出来ぬほど一杯いっぱいだった。
だから、辛うじて微かに頭を下げてそれらを受け取り、再び胸の内で呟く。
雨戸と襖。雨戸と襖……。
そして言われた通り、早速、雨戸を開けにかかる。
だが、古さと放置のせいだろう。
少し空けた雨戸の縁に手を掛けた瞬間、棘が彼の指先に刺さった。
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