3 山 本(つづき)

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「いてっ」 その声を聞いたらしく、部屋のほうで食器棚の整理を始めた木下から 声が掛かる。 「軍手、した方がよくないですか?」 あっ、軍手……。 洋二は、縁側に置かれたままの軍手を慌てて拾い上げた。 そしてそれを両手に着けて、再び雨戸を開けにかかる。 ひしゃげているのだろう雨戸は、動かすのが、かなりの骨だった。 しかもそれが四枚もあり、今の洋二の体力では それを開けただけで息が上がる。 しかし、なんとか雨戸を開け終えた彼に 再び部屋から、木下の声が容赦なくかかった。 「向こうの部屋の方も、お願いします」 恐らく、居間だっただろう部屋の奥側へと小さく指をさし ニッコリと笑い掛けられる。 洋二は、軽く肩で息をしつつも、黙って奥の部屋へと向かった。 しかし、こちらの窓は、さっきの半分の大きさだけに助かった。 だが、それを開け終えてホッとしていると 隣の部屋から、また木下の催促が掛かる。 「山本さぁーん、襖と障子取り払ってください。 それと、高い所の埃落としもお願いします」 えっ……?  しかし少しだけ気を抜いたせいか、にわかに洋二は混乱をしてきた。
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