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「いてっ」
その声を聞いたらしく、部屋のほうで食器棚の整理を始めた木下から
声が掛かる。
「軍手、した方がよくないですか?」
あっ、軍手……。
洋二は、縁側に置かれたままの軍手を慌てて拾い上げた。
そしてそれを両手に着けて、再び雨戸を開けにかかる。
ひしゃげているのだろう雨戸は、動かすのが、かなりの骨だった。
しかもそれが四枚もあり、今の洋二の体力では
それを開けただけで息が上がる。
しかし、なんとか雨戸を開け終えた彼に
再び部屋から、木下の声が容赦なくかかった。
「向こうの部屋の方も、お願いします」
恐らく、居間だっただろう部屋の奥側へと小さく指をさし
ニッコリと笑い掛けられる。
洋二は、軽く肩で息をしつつも、黙って奥の部屋へと向かった。
しかし、こちらの窓は、さっきの半分の大きさだけに助かった。
だが、それを開け終えてホッとしていると
隣の部屋から、また木下の催促が掛かる。
「山本さぁーん、襖と障子取り払ってください。
それと、高い所の埃落としもお願いします」
えっ……?
しかし少しだけ気を抜いたせいか、にわかに洋二は混乱をしてきた。
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