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えっと、襖。襖、と、えっと……。
頭の中に混乱がジワジワと広がりつつも、
洋二は、手前側にある襖に手を掛け、取り外す。
しかし外した途端、混乱は一気に彼を満たした。
襖、どうするんだ? ってか、なんで襖を外すんだ?
だが、これを木下に尋ねる勇気がない。
どうしよう。どうしよう……。
洋二は、襖を両手で抱えたまま、その場に呆然と立ち尽くした。
そんな彼に、またも木下の怪訝そうな声が掛かる。
「どうかしたんですか?」
しかし、完全に混乱と気後れのパニックになった洋二は、
木下を振り返ることすら出来ない。
落ち着け。落ち着くんだ。
頭の中で、必死に自分に語り掛ける。
だが、その気持ちとは裏腹に呼吸はどんどん速くなり、
心臓はバクバクと胸を叩く。
今までならば、ここで投げ出し逃げ出してきた。
だが今は、逃げ出したくても逃げる場所がない。
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