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洋二は、逃げたい衝動を必死に抑え込んだ。
そして、ゆっくりと持っている襖を、すぐ隣の壁に立てかける。
ふぅ……。
思わず彼の唇から、細く息が零れ出た。
だがその瞬間、少し苛立った木下の声が洋二の背中に投げられた。
「襖、掃除の邪魔になるから、ちゃんと土間の方に持って行ってくださいね」
えっ……。
洋二は、一瞬かたまった。
それと同時に、必死に考える。
襖を台所も兼ねた土間に持って行けって、何のために?
今、別の子が掃除をしてるのに、どこに置けっていうのだろう。
落ち着きかけた混乱が再び洋二を覆い、大きな焦りが胸を叩く。
それでも彼は、ノロノロと襖を土間へと運び、台所の脇にそっと立てかけた。
ところが、その時のことだった。
「あの、失礼ですけど、やる気あります?」
「えっ……」
いきなり鋭い声が掛けられ、
思わず振り返った先で、苛立つ木下のキツい目が見つめていた。
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