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「どんな人だった?」
「おとこの人」
「おっきい人?」
「うん……。陽菜子よりおっきいけど、すごくほそくてクロかった」
「クロい?」
「ドロドロした……クロいの」
五十嵐が話の内容をメモに書き込んでいく。
「陽菜子ちゃんって言ったね。その人はどこへ行ったの?」
「わからない」
「じゃあ、その人と陽菜子ちゃんは目を見て会ったの?」
「うん。ひなこがアメをあげたの。そしたらお兄ちゃん、いなくなっちゃった」
「そっか。恥ずかしかったのかもね。きっとお兄ちゃんも喜んでるよ」
「そうかな?」
「うん。ずっと外にいて寒かったでしょう?しっかりご飯食べて、暖かくするんだよ」
彩香はそう言って少女の頭を撫でるとその場に立ち上がった。
「ねえ、お姉ちゃん」
立ち上がった彩香の手を、少女が掴む。
「ん?」
「お兄ちゃん、さむくないかな?」
無表情でそうつぶやいた少女に、彩香はにっこりと微笑んで頭を撫でた。
「大丈夫。お兄ちゃんは大人だから」
「うん……大人かなぁ?」
やはり無表情で少女はつぶやいた。
彩香はポケットからチョコレートを取り出すと、少女に手渡した。
「ありがとね、話してくれて」
少女はチョコレート受け取ると、包みを開けて食べ始めた。
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