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「本田くん…だったかな?」
「はい」
「母もその事件で殺された可能性が高いんだね?」
神藤がそう訊けば、本田は少し神妙な顔つきになった。
「現段階では遺体の確認ができていない状態なのでなんとも。ただ、民家の方に人はいなかったそうです。お辛いとは思いますが、こちらの方に戻って捜査協力をお願いできませんでしょうか?状況が状況ですので、我々も困っている状態です」
本田の話を聞いて神藤は確信した。母が死んだということを。
しかし今、日本に帰るわけにはいかない。
明日は大事な論文発表がある。何年もかけて資料を集め、この日に挑んだのだ。
神藤はきつく目を瞑り、大きく息を吐き出した。
「すまないが、彩香に代わってくれるか?」
そう言われると、本田はすぐに画面上からいなくなり、代わりに彩香が顔を出した。
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