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また、不気味なことを言い出した…と、五十嵐は眉間にしわを寄せながら、かつての同級生である予言者を睨みつける。
「ああ…これが予言?」
緒方が興味深そうにその様子を見ていると、予言された本田が平静を装いながら彩香を見て、「なぜそう思われるんですか?」と、訊いた。
汗をかいたペットボトルのお茶を引き寄せると、その様子を見ていた彩香は数回瞬きをした後、目を伏せた。
「なんとなく……そんな気がしただけです」
そうつぶやけば、専門家の緒方は興味津々だ。
「へえ……心理学とは違うのかなぁ?」
再び緒方が彩香の顔を見つめながらつぶやく。
そんな中、急に五十嵐が彩香の腕を掴んだ。
「ホテルに連れて行きます」
そう早口で言ったかと思うと、片手で荷物を持ち上げ、もう片方の手で彩香の腕を引っ張って体育館を出て行く。
本田は二人の姿を見送る事もできず、黙ってお茶を握りしめていた。
「ねえ、ねえ、本田さん。あれ、マジでヤバイやつですよ。あの人、テレパスかも」
横から夢みたいな話をする緒方が鬱陶しくて仕方なかった。
本田は緒方に視線を向ける事も無く立ち上がり、そのまま体育館を後にした。
残された緒方は黙って飲みかけのお茶を見つめる。
「ライバル登場……ってとこかな?」
そんな緒方の独り言など、機材の前で慌しく走り回る捜査員には聞こえるはずも無かった。
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