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彩香が保健室を出ると、本田と五十嵐、緒方もその後に続いて部屋を出た。同時に外で待機していた警官が保健室に入っていく。
彩香は廊下に出た途端、立ち止まって天井を見つめた。
瞬きもせず、ただじっと天井を見つめている。
「おい、もっと聞き出せたんじゃないのか?」
本田が横から声をかける。しかし、緒方がそれを制した。
「アスペルガー症候群ですよ。俺、気付かなかったなぁ。発見された時、相当寒かったし、ショックで思考に障害が出てるのかと思ってたけど、さっきの対応で気づきました」
「アスペルガー?なんだ、それ」
「コミュニケーションを苦手とする広汎性発達障害です。小学校低学年だと発見されにくいんですけどね、彼らは空気を読むのが苦手で、言葉の意味をそのまま受け取るといった特徴があります。たぶん…昨日、僕が話した時、言葉の選択を誤ったのかもしれません。だから犯人の話を聞き出せなかった……」
次から次へと出てくる謎の言葉に、本田は頭痛を感じた。
小さなため息をついたとき、目の前に薬が差し出された。
「薬のアレルギーや常用している薬がないならどうぞ」
彩香の手には先ほど五十嵐に渡された薬と同じ痛み止めが乗っていた。
本田は黙ってその薬を受け取ると、体育館へ向かって歩き出した。
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