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犯人の正体
体育館に入った4人は、昨日と同じように倉庫の前で机を囲んで座った。
机に置かれていたお茶で、本田は薬を流し込む。
「ところで、現在犯人の捜索は?」
彩香が口を開くと、緒方が身を乗り出した。
「現場に残された凶器の指紋から、犯人は一人と考えました」
「凶器はなんですか?」
「現場には複数の凶器が残されてました」
緒方が一枚一枚、写真を机の上に並べていく。
スコップ、つるはし、斧、ハンマーなど、全部で7枚の写真。
どれも殺人の凶器としてわざわざ選ぶものではない。
「この全てから犯人の指紋が?」
「ええ。他にも集落の住民や工事業者の人間の指紋も検出されましたが、この全てに犯人らしき同一人物の指紋が発見されてます。で、俺的には犯人は山中に潜んでいると推測しました」
「なぜ?」
緒方はもじもじしながら本田に視線を向けた。
これ以上の情報を話してもいいのか、確認したかったのだ。
それに対して本田は無言で頷くと、その途端、緒方はあからさまにうれしそうな表情を浮かべて前のめりになった。
「凶器から出た指紋から、犯人を特定しました」
「犯人が分かってるってことですか?」
「ええ。しかし犯人が謎なんですよねぇ」
「謎?誰か分かってるのに?」
「犯人は…15年前に行方不明になった少年、神楽坂智。現在19歳」
「行方不明?」
彩香は首を傾げた。
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