幼馴染

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幼馴染

「なんでああいうこと言うんだよ!分かってんだろ?殺人事件なんだぞ?お前の予言とか推理なんかで解決できる事件じゃないんだよ」 運転席の五十嵐が、助手席で大人しく座っている彩香に声を荒げて言った。 よりによって緒方の前であんな発言をするなんて思いもしなかった。 緒方という男は、専門家かどうか、五十嵐にはいまいちよく分からないが、神秘的な話が大好物で、事を大きくしてしまう性質を持っている。 上司である本田だって、非現実的な話は信じない。とんでもなく頭の固い男だから。 外は真っ暗で山道には街灯もなく、人の姿も見えない。 昼間と違って不気味な空気さえ漂っている。 そんな場所に、かつて予言者と呼ばれた気味の悪い同級生と一緒にいるのだ。しかも二人きりで。 五十嵐はなんとかこの空気を変えたかった。 「私は予言も推理もしたことはないわ。思った事を言っただけ」 平然とした口調でそう言われると、五十嵐は更にイラついた。 「学生の頃のは何だったんだよ!スキー遠足に行ったら斉藤は転んでケガをするとか、修学旅行で喫煙で補導されるやつが出るとか、ことごとく当たったじゃねーか!」 そんな昔なことをよく覚えているなぁ…と、思いながら、彩香も記憶を辿る。
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