終章 補助魔法の勇者は火力が足りない

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「目覚められたか、よかった!」 噂のキリー姫だ。彼女はエラザンを見てぱっと顔を輝かせるが、すぐに険しい表情になる。 「……エラザン、話があるんだが」 「あ、ああ。何だ?」  キリーはしばらく黙り込んでいたが、意を決したように顔を上げ、エラザンへと近づいた。 「おぬしを取り巻く状況はあまり良くない。ウルバトスは適当な理由でエラザンを処刑する計画まで立てている、このままではおぬしの命も危ないかもしれない」 エラザンは体を起こし、緑を帯びた桃色に光る鱗を握る。 「まあ、俺を信じろって方が無理だろう」 「わらわはそうは思わない、エラザンは国を守った勇者だ!」 キリーのまっすぐな視線を受けて、エラザンは思わずたじろぐ。 「姫さん、俺はそんな格好の良いものじゃ……」 「いや、そうじゃないな」 キリーはエラザンの手を握った。 「これからおぬしはわらわの婚約者じゃ。よろしくエラザン、拒否権はないぞ」 「は、はあ?」  その後ろに立ったオーティアスはペラリと書状を出し、親指を立てる。 「陛下は君を息子にする気満々でね。魔法協会長の権限を乱用して届も作りました」 彼らの計画はエラザンを王族へ引き入れることで、魔法使いの陰謀を阻止することであった。いくら一種協会長でも王族には手を出せないはず、ということらしい。 アリアもため息をついて首を振った。 「大変でしたよ、眠ったエラザンさんに無理矢理署名させるところとか。あ、ついでにこの紙にも保護魔法をしっかりとかけておきましたので、婚約おめでとうございます」 「あんたら本当にぬかりないな!」 「でも、言うほど嫌じゃないでしょ?」 そう言うオーティアスに、エラザンは少し言葉に詰まる。 「そ、れは……」 期待を裏切らない、などとのたまうオーティアスとアリアにエラザンが枕を投げつけたところで、部屋の外が騒がしくなる。  一同は目を合わせると、何も言わず顔を上げた。戦いはこれからだが――彼らがいれば何とかなるだろう。エラザンはそう思った。  おわり
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