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「補助魔法協会だと? そんなものは聞いたことが……」
ポカンとしたエラザンに、彼女は慣れた手つきで一冊の本を取り出し、付箋の貼ったページを示す。
「アカデミーの教科書にも、記載はありますよ」
散々使い倒した教科書のはずなのに、聞き見覚えがないのはどういうことか。そう思ったエラザンだったが、示された部分を覗き込んで納得した。アカデミーが専門とする攻撃魔法についてはもちろん、回復魔法の仕組みも長々と解説されているのだが、補助魔法の説明は、欄外だった。
――補助魔法協会は三種魔法免許の発行を行う。魔法の性質上、専門にする魔法使いは少ない。
エラザンは首を振って顔を上げる。
「なんだ、このやる気のない記載は」
仮面の男は、悔しそうに拳を握る。
「限界だった。一種の奴らは頑なに三種魔法の有用性を認めようとしないし」
「俺も別に補助魔法に興味はないが」
そう冷たく返すエラザンに、怪しい男は派手な動きで肩をすくめる。
「そうは言うけどね、エラザン=コーデリア君。君は攻撃魔法の免許を取るのは難しいんじゃないか」
「なぜ俺のことを?」
図星を突かれて戸惑うエラザンに、男は親指を立てて言う。
「適性のありそうな人を見つけたから、君の学校生活は全力で覗かせてもらったよ。君が模擬戦の度にボコボコにされるところとか、下級生の魔法で医務室送りになっていくところとか……あれ大丈夫なの?」
エラザンは不機嫌な顔で答える。
「人間、売られた喧嘩を買わなくなったらおしまいなんだよ」
仮面の男は納得したように頷いた。
「うん、そこは心配いらないんじゃない。弱い割に態度でかいなーとは私も思うから」
「うるさいな、何の用なんだ、あんたは」
ため息を漏らすエラザンに、男はパタパタと手を振って言う。
「まぁ、今日は喧嘩をしに来たわけじゃなくね。ひとつ考えてみて欲しいんだよ。君の弱さはどこから来ているのだと思う?」
急にトーンの変わった男の声に、エラザンは訝しく思いながらも答える。
「それは……それは俺の魔力が足りないからだろう」
仮面の男は彼の前に指を立てる。
「いいや、違うね。君が弱いのは補助魔法を垂れ流しているからだ」
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