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オーティアスが身を引くと、エラザンの手に握りしめられていたものが分かった。妙な色に輝く一枚の鱗。エラザンは既視感のあるそれをつまみ上げ、オーティアスの方へ顔を向けた。
「え、これは本物か?」
「うん、大変だったんだよ。今は君の余った魔力が全部そこに吸われているから大人しいけど」
ドラゴンが倒されても、その凝り固まった魔力はそう簡単には消えなかったらしい。宿主を失ってなお狂ったように魔力を吸い集める逆鱗を鎮めるには、方法は一つしかなかった。魔力を垂れ流すエラザンに押し付けることだ。
そういえば、いつもエラザンをじわじわと苦しめてきた魔力が感じられなくなっている。解放されたような、どこか物足りないような気分のエラザンは、複雑な顔でオーティアスを見やる。
「つまり俺が身をもって便所の蓋になっていると。それ、俺に責任が大きすぎないか?」
オーティアスも大きくため息をついた。
「そう、それで王宮がおおわらわでね。この部屋にも見知らぬ人間は近づけられないくらいだ」
国の行く先をエラザンの意思ひとつに任せるわけにはいかないということだろう。エラザンは王宮に監禁状態、そのまま彼ごと葬り去ろうという動きも出始めているらしい。
もっとも、彼を守る人々もいた。クロードは鋭い目をして扉の外に出ていく。そちらに視線を向けたオーティアスは立ち上がって部屋を見渡した。
「君の味方もいるから安心してよ。君を治療してくれたのはアカデミーのケリー先生だし、王も君のことを認めている。もちろん私たちも、君を殺させる気は無い」
「あんたが協力してくれるのは、俺が補助魔法使いだからか?」
仮面の男はふっと笑みを漏らしながら立ち上がり、扉へ手をかける。
「そりゃあ大切なお仲間だし、それもあるけど。私も無粋な真似はしたくないからね」
エラザンが首を傾げたところで扉が開き、外からひとりの女性が駆け入ってくる。
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