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第2章 始まらない恋
「遅刻が多い、一体どうしたんだ」
「いくら優秀な君でも規則は守らないと」
皆前で、さらし者の如く、
長々と上司に説教された。
「すみません」
麻美は、ひたすら頭を下げ、やっと解放された。
デスクに戻ると、同僚の美和が待ち構えていた。
「もう事実を話したら、今週2回目でしょう。やばいわよ!!」
言葉とは裏腹に顔は笑っている。
「男に見惚れて遅刻しましたて、云うの」
机の上を整理しながら麻美は口を尖らせた。
「いっその事告白したら、毎朝会えるんでしょう」
「それができたら苦労しないわよ」
「まったく初心なんだから、恋愛にも成らないじゃない」
美和はケラケラと笑った。
「私が代わりに・・・云ってあげようか?」
「・・・」
美和は、麻美の顔を覗き込み、好奇心に満ちた顔で返事を待っている。
「いいわよ、余計な事しなくて・・・」
麻美は、少し動いた自分の心が悔しかった。
「間違いなく、自然消滅するわね、始まりも終わりも無い、無駄な時間ね」
美和はまたケラケラと笑った。
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