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4 香 川(つづき)
これで再び、保は、これも断る術をなくしてしまった。
渋々と道具を受け取り、新人大工と交代するように窓の方へと歩み寄る。
だが、やはり15からずっとやってきた現場作業を
体は、きちんと憶えていたようだ。
三年以上も道具に触っていなかった事など嘘のように、
窓枠は、サクサクと外されていく。
「おい、恒夫。窓用の角材と新しい窓一式、車から持ってこい」
背後で金槌の音をさせながら、ベテランの声が新人に飛ぶ。
そして、四方の飾り枠が取り外され、
少し変形したアルミ製の窓枠も取り外されたところに
そっと保の脇から補強用の角材が差し出された。
しかし保は、それを受け取らずに
新人と立ち位置を交代するように窓から離れた。
「やってみなよ。やり方は、分かるんだろ?」
保の促しに、新人の視線が、おずおずとベテランに向けられた。
その彼にチラッと視線を向けたベテランが、ぶっきらぼうに言う。
「教えて頂け。それで無理そうなら、丁寧にお願いしろ」
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