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「足、っすか……?」
音がしそうな程、ギクッと保の胸が軋んだ。
だが今度は、動揺はせずにゆっくりと彼を振り返る。
「三年前に、仕事中の事故で……」
そうですか。
呟くように言った大工は、ふと作業の手を止める。
そして、真っ直ぐに保に目を向けてきた。
「でも、良い腕してるじゃないですか」
「どうも。けど、俺なんかができる現場作業は限られるもんで、
却って仲間の足手まといになりますから」
短い会話を止めるように、ベニヤ板を抱えた新人が戻ってくる。
「ま、でも、コイツの作業を少し手伝ってやってもらえると助かります」
よろしくお願いします。
まだ十代だろう若者にも頭を下げられ、保は、曖昧に淡く苦笑を返した。
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